乳房の石灰化とは
組織にカルシウムが沈着することを「石灰化」と呼びます。
乳房は、しばしばこの石灰化が起こる器官です。ほとんどの石灰化は病的な問題のないものですが、中には乳がんが原因となって乳房の石灰化が起こっているケースがあります。
石灰化というと、乳房が硬くなるようなイメージがあるかもしれません。しかし実際には1つの石灰化組織の大きさは1ミリ以下であり、乳房が硬くなるなどの自覚症状はほとんどなく、マンモグラフィ検査を受けて初めて発見が可能になります。
乳がんのうち約20~30%に石灰化が見られるため、定期的なマンモグラフィ検査は、乳がんの早期発見につながります。
石灰化の原因
多くの石灰化は、分泌型と言ってホルモンの影響などで乳腺内に分泌が起こることにより、含まれているカルシウムがマンモグラフィに写るもので、病的な問題はありません。
一方で乳がんによって起こる乳房の石灰化は、乳管内で発生したがん細胞が壊死しそこにカルシウムが沈着することなどで生じます。これらは、マンモグラフィによって撮影された個々の石灰化の形と、分布状態から、病的かどうかを判断します。
石灰化の症状
乳房の石灰化が起こっても、普通乳房が硬くなるなどの自覚症状はありません。
ただし乳がんによる石灰化である場合には、しこりや、乳頭からの血性分泌物などの症状が認められることもあります。
要精密検査の石灰化が
乳がんである確率は、10%程度
乳がんの症状の1つに、乳房の石灰化があります。ただし、すべての乳がんに石灰化が起こるわけではありません。乳がんのうち、約20~30%において、乳房の石灰化が認められると言われています。
また、検診で要精密検査となった石灰化で、乳がんと診断されるのは10%程度で、怖がらずに精密検査をしていただければと思います。
乳がんの石灰化の特徴
マンモグラフィ検査で石灰化を確認した場合に、1個1個が形や大きさが不ぞろいで、長細かったり、トゲトゲした形が多くなります。また、1か所に多数の石灰化を認めたり、石灰化を乳頭を頂点とした三角形のような範囲に認めることもあります。これは乳管内にがん細胞の範囲が伸びていくために起こることですが、いずれも、検査をして初めて分かることであり、自覚症状として認識できるような特徴は皆無と言えるでしょう。
石灰化の検査
マンモグラフィ検査
乳房を圧迫板で挟んだ状態でX線撮影を行います。
微細な石灰化であっても、発見が可能です。石灰化の形状や範囲などから「がん」なのか、そうでないのかを判断します。
ステレオガイド下
マンモトーム生検
マンモグラフィ検査でがんが疑われる場合には、ステレオガイド下マンモトーム生検を行います。
マンモグラフィで病変部を確認しながら特殊な針を刺し、組織を採取し、顕微鏡で診断します。
石灰化の治療方法
石灰化を伴う乳がんの多くは、乳管内に留まる非浸潤がん(ステージ0)です。
乳房温存術や乳房切除術にてがんを切除します。通常、再発を防ぐための、化学療法などは必要ありません。
石灰化が見つかったら
精密検査を受けましょう
乳がん検診で乳房の石灰化を指摘された場合も、ほとんどは良性です。慌てず、適切な対応をとりましょう。
ここでいう適切な対応とは、「精密検査を受けること」です。なぜ石灰化が起こっているのかを正しく把握することが、健康を守ること、そして安心につながります。
また、石灰化を見つけることのできるマンモグラフィは、乳がん検診などで定期的に受けるようにしましょう。